高齢者等終身サポート事業ってなに? 知っておきたい「ガイドライン」のポイント!

★終活のアレコレ

近年、私たちの社会は高齢化が進み、核家族化も相まって、身寄りがなかったり、頼れる家族が身近にいなかったりする高齢者の方が増えています。そんな中で、入院や介護施設の入所時の手続き、日用品の買い物、さらにはご逝去後の事務処理まで、家族や親族に代わって支援してくれる「高齢者等終身サポート事業」を行う事業者が注目を集め、その需要もさらに増加すると見込まれています。

この事業は、サービスが長期にわたり、死後の事務処理も含むという特徴があります。そのため、契約内容の確認が難しかったり、判断能力が低下した高齢者が主な対象となるため、後でトラブルになる可能性も指摘されていました。そこで、利用者が安心してこのサービスを利用できるよう、関係省庁が連携して「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。

このガイドラインは、事業者が適切にサービスを提供するための指針であるだけでなく、私たち利用者がサービスを選ぶ際の目安にもなるよう、チェックリストも用意されています。

ガイドラインが対象とする事業とは?

このガイドラインは、主に以下の3つの要件を満たす事業者を対象としています。

1. 「身元保証等サービス」と「死後事務サービス」の両方を提供していること

2. 本人(契約者)と直接契約を結び、サービスを提供していること

3. 事業として継続的にサービスを提供していること

ただし、弁護士や司法書士などの専門職は、それぞれの法律で業務が規制されているため直接の対象ではありませんが、ガイドラインの内容を参考にすることが推奨されています。

高齢者等終身サポート事業で受けられる主なサービス例

この事業で提供されるサービスは多岐にわたりますが、大きく以下の3つに分類できます。

身元保証等サービス

    ◦ 医療機関や介護施設への入院・入所時の連帯保証

    ◦ 入院・入所、退院・退所時の手続き代行

    ◦ 緊急連絡先の受託や緊急時の対応。

    ◦ 死亡時や退去時の身柄の引き取り。

    ◦ 医療に関する意思決定の支援への関与(※医療同意権自体は事業者にはありません)。

死後事務サービス

    ◦ 死亡の確認や関係者への連絡。

    ◦ 死亡届の提出代行や火葬手続き。

    ◦ 葬儀・火葬・埋葬に関する事務。

    ◦ 行政機関への届出等(年金、医療保険関連など)。

    ◦ 家屋等の賃貸借契約の処理、電気・ガス・水道等の公共料金の支払・解約。

    ◦ 携帯電話の解約。

    ◦ 家財道具や遺品等の整理、相続人への引き渡し。

日常生活支援サービス

    ◦ 通院の送迎・付き添い、買い物代行。

    ◦ 公共料金等の支払代行、生活費等の管理。

    ◦ 不動産や動産などの財産管理、預貯金や金融商品の取引に関する手続き代行。

    ◦ 重要書類の保管。

    ◦ 税金の申告・納税に関する手続き代行。

利用者が知っておきたい! ガイドラインの主なポイント

ガイドラインでは、利用者の「尊厳を守り、自己決定を尊重すること」が最も重要だとされています。私たちが安心してサービスを利用するために、特に注目すべき点をいくつかご紹介します。

• 1.契約締結時の「丁寧な説明」が必須!

    ◦ 事業者は、私たちの年齢や心身の状態、知識、経験に合わせて、契約内容を分かりやすく丁寧に説明する義務があります。

    ◦ サービス内容、費用(入会金や預託金など区分して示す)、支払い方法、判断能力が低下した場合の対応方針、解約方法や返金ルール、預託金の管理方法など、重要な事項を記した「重要事項説明書」の交付が求められています。

    ◦ 契約書も必ず作成・交付されることになっています。

    ◦ 「契約しないと生活が維持できなくなる」といった不安を煽るような不当な勧誘は禁止されています。

• 2.預けたお金(預託金)は安全に管理されるべき!

    ◦ 将来のサービス費用として事前に預けるお金(預託金)は、事業者の運営資金とは明確に区別して管理することが望ましいとされています。具体的には、信託銀行との信託契約を結んだり、他の事業者に管理を委託したりする方法が推奨されています。

    ◦ 事業者は、この預託金の管理状況を定期的に私たちに報告することが望ましいとされています.

• 3.判断能力が低下した場合は「成年後見制度」へ繋ぐ

    ◦ もし私たちの判断能力が不十分になった場合、事業者は「成年後見制度(任意後見制度や法定後見制度)」の活用を促すことが重要だとされています。

    ◦ 契約時に、将来的に判断能力が低下した場合の対応方針を、重要事項説明書や契約書に明記しておくことが求められています。

• 4.寄付や遺贈は「契約条件にしない」!

    ◦ 事業者が、サービス契約の条件として「利用者の死亡時に財産を寄付する」といった「死因贈与契約」や「遺贈」を求めることは、利用者の真の意思に基づくものか疑義が生じるため、避けるべきとされています。

    ◦ もし死因贈与契約を結んだ場合でも、利用者に撤回権があることを説明し、記録に残すことが望ましいとされています。

    ◦ 遺贈を受ける場合は、利用者の自由な意思を担保するため、公正証書遺言によることが望ましいとされています。

• 5.契約の変更や解約がしやすいか?

    ◦ 解約方法、解約理由、解約時の返金に関する取り扱いについて、重要事項説明書や契約書に明確に記載し、私たちに丁寧に説明することが重要です。

    ◦ 不当に高額な解約料を設定することは消費者契約法で禁止されており(消費者契約法第9条第1項)、事業者は解約料の算定根拠を説明する努力義務を負っています。

• 6.事業者の「情報開示」と「相談窓口」

    ◦ 事業者は、自社の基本情報、提供しているサービス内容、費用、解約ルール、預託金の管理方法などをホームページなどで公開し、私たちが事前に確認できるようにすることが重要です。

    ◦ 契約に関するトラブルを防ぐため、相談窓口を設置し、その連絡先をホームページや重要事項説明書に記載することが望ましいとされています。

国の取り組みと今後の課題

政府は、このガイドラインの策定に合わせて、金融機関や携帯電話会社が、身寄りのない高齢者に代わって高齢者等終身サポート事業者が手続きを行う際の対応を促しています。また、医療・介護・福祉など関連業界や自治体にも、このガイドラインを広く周知していく方針です。

今後の課題としては、高齢者等終身サポート事業者の医療に関する意思決定支援における役割の明確化、介護保険外サービスの整理、死亡届の届出資格者の検討、成年後見制度の見直し、そして優良な事業者を認定する仕組みの創設などが検討されています。

まとめ

「高齢者等終身サポート事業」は、高齢者の生活を支援し、安心をもたらす可能性を秘めた大切なサービスです。このガイドラインは、事業者が適正に運営し、私たちが安心してサービスを選び、利用できることを目的としています。サービスを検討する際には、このガイドラインのポイントを参考に、ご自身に合った信頼できる事業者を選んで、安心できる終身サポートを見つけてくださいね

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